ネット上には、
易辞の引用が多々ありますが、
この辞は見たことがありません。
本日、
易経をぼんやり読んでいて、
「なかなかいいじゃないか☆」
と思ったのでちょっと一筆。
× × × ×
有孚于飲酒。无咎。
濡其首、有孚失是。
(未済、上九)
飲酒に孚あり。咎なし。
その首を濡らすは、
孚あれども
× × × ×
岩波易経の訳がすばらしい。
上九は陽剛居極、
未済も今や終ろうとする時であるから、
心の誠実さを失わず、静かに酒を飲んで悠然と
時勢の転換を待つ心がけであれば、咎はない。しかし事の済(な)らぬのに焦って酒に溺れ
首まで酒びたりになるようでは、
たとえ誠実の志があっても、
それまでに積みかさねた是なること、手柄まで
併せて失ってしまうことになるであろう。
易中の「飲酒」は、
- 時を待つ。
- 時の流れに身を任せる。
という意味で用いられます。
上爻は未済卦の終りであって、
六十四卦の終りでもあります。
こうした時勢転換の時には、
人間の力なんて微々たるものだから、ゆったり
酒でも飲んで時の流れに身を任せましょうや、
というのでしょう。
そして、
易は「過ぎる」ことを嫌いますから、
酒に身を溺らしては「よろしきを失う」と
戒めているのです。
本田済「易」では、
- 泰然と天命を待つ。
- 運命を甘受する。
という語でもって、この爻を
説明しています。