震為雷の占意に、
神を祭るにはよいとします。
(柳下「易入門」)
とあります。
確かに卦辞にこうあります。
匕 鬯 を喪わず。
「匕鬯」は、
鼎から供物の肉をすくい取るさじ(匕)、
それと、
よい香りのするお酒(鬯)のことで、
ともに祭祀に用いられるものです。
「鬯」の原義は、
説文によればこうです。
黒きびを鬱金香(うっこんこう)と醸造し、
かおりをただよわせて神明を降(くだ)す。
「凵」から構成され、「凵」は器である。
中は「米」に象(かたど)る。
「匕」は中味をすくい取るものである。
『易』<震>に「不喪匕鬯」という。
(漢辞海)
このお酒を神前の地面にたらすことで、
よい香りがぶわあっとのびひろがって、
おごそかに神が降りて来るのです。
なんとも神秘的で、こういう場面は、
易経の魅力の一つです。