何か新しいことをしようとして、
その可否を筮したところ、
乾為天の第五爻を得たとしましょう。
すると、普通は、
「飛龍在天」の辞を見て、
運の強い時とのイメージを抱き、
「大いにやってよろしい」
と占うのではないでしょうか。
しかしちょっと待ってください。
これが、もし、
現在が「飛龍」の状態だとしたら、
これ以上進むことは、
上爻の「亢龍有悔」の運気になってしまう、
ということにも、なるのです。
すなわち、
目下の絶好調にウヌボレて、
進むを知りて止まるを知らざれば、
(純陽の卦ですからね)
「後悔することになりますぞ」
という占になるのです。
ここらあたりが、
爻辞占のムツカシイところで、
筮前の審事によって時・状況をよく見極め、
爻辞を固定的に用いないで、
臨機応変に占う必要があるのです。
盈つれば虧ける。
陽窮まれば陰に変じる。
これが易の理ですが、
無尽蔵に発展するということは、
易の考え方にはないのです。
現在が「飛龍」であれば、
新しいことに手を出すのではなく、
今の「中(ちゅう)」の状態をいかに維持するか、
が占のポイントになるのです。
× × × ×
巷間「成長と分配」
ということを耳にしますが、
我が国にこれ以上の経済成長はあるのか。
経済に疎い小生にはわかりませんが、
君主、為政者にはぜひ、上記の易理を、
心得ておいてほしいと、
切に願うのです。