書店で平積みされている易経本に、
「乾惕」という語があります。
出所は易経にあります。
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君子終日乾乾。
夕惕若。厲无咎。
── 易経、乾九三
君子(人格者)たる人は、
朝から晩まで乾々と彊(つと)めて、
惕若(てきじゃく)と油断せず、
緊張して努力精進すれば、
厲无咎(あやふけれどなしとがめ)、
即ち危(あやふ)い場合も、
無難に切抜けることが出来る。
(服部宇之吉)
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大象には、
天行健。君子以自彊不息。
ともあります。
易を学ぶ者は、
天体が休むことなく運行しているように、
日々易経を読まねばならぬ。
・・と云えると思います。
柳下先生は、
「この卦を得た時は、
何はともあれ勤勉でなければならぬ」
と云っていました。
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扨て、
占において乾の三爻を
得た場合ですが・・
辞はアドバイスとして
用いるべきであって、
安易に「頑張れば大丈夫」とは、
占うべきではありません。
岩波易経には、
- 下卦の極。
- 警戒を要する危位。
とちゃんと書いてあります。
ですから、
占った時点では、
「危うし。咎あり」
と見るのが常道なのです。
これは、
算木を見れば、
一目瞭然でしょう。
純陽の卦で、
三という危位にあり、
下卦の極で乾の上。
重剛不中。
虎の尾を伏す。
どう見ても、
剛に偏り過ぎるのです。
勤勉というより、
毒を吐き(兌を伏す)、
自信過剰になり、
自らの誤りを認めない。
まあ、
我が国の首相のごとき、
爻象なわけです。
ゆえに、
修養の面から云えば、
努めて剛に過ぎる点を
抑えるべきであると。
・・など、など、
頭の中で想定しながら、
順次占考を進めていくのが、
三変筮という筮法です。
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小生の勝手な解釈ですが、
乾三爻の辞を、
昼間は黙って務めを果たし、
夕べには神を畏(かしこ)めば・・
と読んでもよいと思います。