朝、寝床の中で読み、
冒頭の「波打ち揺れる月が」の一句の、
揺らめく感じに魅せられました。
波打ち揺れる月が、その屈託のない美しさを
浴 みさせんものと、わななく湖に送ってよこす
白い光線さながら、われわれの方にしのび寄る、
浮れ女 の、いわくありげな眼差し。
× × × ×
ボードレールは、
毎朝、寝床で読むのですが、
一篇の詩を、
阿部良雄訳→安藤元雄訳→鈴木信太郎訳
の順で読むことにしています。
誰の訳が優れている、
ということはなく、どれも
素晴らしいのですが、
この詩はこの訳、しかしこれはこっちだな、
のように、詩によりけりで、
こちらの訳がよかったり、
はたまた高尚な訳がよかったりします。
岩波の鈴木訳は、
格調の高い重厚な語法ゆえに、一見、
厳めしい顔つきをしているのですが、
読んでみると案外に読みやすい。
訳文がそのように、
工夫されているようです。