こうした場面における、
スタンダールの文章は実に素晴らしい。
まるで映画の1シーンのようである。
槍騎兵第二十七連隊は、一八三*年三月二十四日午前八時半ごろ、うすら寒い曇り空の下、ナンシーにはいった。威風堂々たる軍楽隊が先頭を進み、土地の者や若い女工たちのあいだでたいへんな人気をあつめた。緋の軍服を着て白馬にまたがった三十二名の喇叭手が、天にもとどけとばかりに吹奏したからだ。おまけに最前列にならぶ六名の喇叭手は黒人で、喇叭手長は七フィート近い大男だった。
「リュシアン・ルーヴェン」
島田尚一・鳴岩宗三 訳
朝の八時半に、
炎の軍服を着、白馬にまたがった軍楽隊が、
天に向かってラッパを響かせる・・
うすら寒い曇り空の下の、
張り詰めた空気感が、
伝わってくるようではないか。
第二十七連隊。
午前八時半。
三十二名。
七フィート。
・・など、
記述が具体的である。