夬の二爻に「莫夜」とあります。
新釈漢文大系 易経 には、
この「莫」の字義が述べられていて、
おもしろいので引用してみます。
「莫」は音「暮」(ボ)で、暮(くれ)の本字。
艸と艸との中に日が没したことを示す会意文字。
日が暮れてなくなる義より転じて、
「なし・くらし・なかれ」等の義に用いられるに及び、
更に日を加えて「暮」とし「日が暮れる」の義とした。
「莫」という字は、
草と草の中に日が沈むという、
会意文字のようです。
なんで海とか山に沈まないのだろう、
と思ったりもしますが、*1
草の中に太陽が没してゆくイメージは、
シュールレアリスムのよう。
また、
夬二爻には、
「惕」字が出て来ます。
そして、
惕は乾の象なのだと。
云われれば、惕は、
乾為天の三爻にもあった辞。
古い易書には、
「易を一文字で表現すれば、
それは『惕』である」
という記述があります。
「惕」を知れば、
易は卒業なのであると。*2
つまり、
乾を知れば、
(天を畏れるということを知れば)
易はわかったも同然なのです。
このように、
易辞の一文字というのは、
深い意味を含んでいることがあり、
ゆるがせにはできません。