易経を読むブログ

易占目的の ブログ ですが「易経を読む」と謳っているのは、易占に易経は不可欠であるという考えからです。「有料記事」は知っておくべき六十四卦の見方や占例を記してみました。無断転載禁止。

挿話の魅力

物語とは無関係なエピソードを、
このようにさらりと挿入してあるのも、
スタンダール小説の魅力です。

以下は、
サン・ペトロニオ聖堂における、
ある場面。

× × × × 

引用:
そこを出るまえ、大きな聖母像の前に
すわっている老婆に近づいた。そのそばに
鉄の基台の上に同じ金属の三角形が垂直におかれ、
その縁にたくさんの小釘が立っていて、
それは信者たちがチマブエ作の有名な聖母像にささげる
小蝋燭を立てるためのものだ。
ファブリスが近づいたとき七本の蠟燭がともっていた。
彼はこのありさまをのちにゆっくり考えるつもりで、
はっきり記憶にとどめた。
 「お蝋燭はいくらだ?」と老婆に聞く。
 「一本二パヨで」
じっさいそれは羽ペンの軸ほどの太さで
長さも一尺に足りなかった。
 「あの三角台の上にあと何本立てられる?」
 「六十三本。七本あがっておりますから」
 (そう、六十三と七とで七十になる。
  これもおぼえておくことだ)
と、ファブリスは思った。彼は蝋燭代をはらって、
自分で最初の七本を立て火をともし、
おそなえの祈禱のためにひざまずいた。
それから立ち上がって老婆にいった。
 「ごりやく があったんだ」
:引用終り

生島遼一 訳「パルムの僧院