「易─占法の秘伝」に記されている、
真勢派・谷川龍山の占例で、
風沢中孚を得たにもかかわらず、
「互いに口舌あって争う」意を
見ているものがあります。
これにつき、著者の柳下先生は、
このようなコメントを付しています。
中孚は誠を以て相向う象と普通はみます。
筮前の審事によって象の見方が変わる良い例です。
中孚の基本は、
兌口の向かい合う、口づけの象で、
相思相愛、孚のある卦ですが、
谷川龍山は筮前の審事によって、
兌口と兌口のぶつかり合い、
口論とこの卦を読んだのです。
もしかして、
離婚相談でこの卦を得たとすると、
卦を読むこともせずに、
「でも二人は愛し合っていると
出ていますヨ」
なんて云ってしまうのでは?
(初心者!)
易占のムツカシサは、
占者がその都度、
筮前の審事いかんによって、
卦の意味を創造しなければならない、
という点にあります。
基本の卦意卦象を知ったうえで、
それを自在に応用して、
独自の解釈を創り出すのです。
これは易占の特質というより、
本来「占い」というものはすべて、
こうなのかもしれません。
糊付けの易、固定的な解釈では、
占いが死んでしまうのです。