バルザックは、
建物とか人物とかを事細かに、
もううんざりというくらいに観察し、
描写するのであるが、その人物描写には、
人相術も取り入れられている。
バルザック全集「村の司祭」の訳注には、
こうあります。
八八頁 ラヴァター スイスの神学・哲学者(一七四一~一八〇一)。いわゆる観相学の創始者。バルザックはその著書『観相学』から大きな影響を受けており、ラヴァターの名はバルザックによってもっとも多く引用される名前の一つである。
(加藤尚宏)
バルザックは云います。
小説の荘厳な虚偽は、細部の真実に支えられなければ崩壊してしまうだろう。
(中村光夫 訳)
そのためかどうか、
人物を登場させるに先立って、
顔、体つき、髪、皮膚、しぐさ、服装等について、
ネチネチ、ネチネチと説明するのですが、
もしかすると、それは、
観相学に裏打ちされた、以後の物語のための
伏線なのかも知れません。