真勢中州を師としておられる、
松井羅州の占例です。
久しく患ひ伏す一老人に対し、其の治方を問はれた松井羅州が、筮して 『剥』 の 『坤』 に之く(剥の上爻変)を得、治癒せしむべき方法皆無であると断じた。
(「易学通変」 より)
剥卦は、
易学大講座によれば、
老衰の卦。
病んで魂は既に肉体を離れようとしてゐるやうな、寂しい境地にある者です。
・・と、あります。
たしかに、
剥の卦象を見ると、
☶ ☷
☷ ☷
一~五の肉体は既に滅んでいますし、
一陽の魂は群陰の肉体を離れようとしています。
そして、それが、
之卦の坤となると・・・
最後の一葉であった魂は天に召され、
肉体は地に帰してしまった象となります。
つまり、これは、
「必死の占」 です。
占者である松井羅州は、
この死を天寿によるものとしています。
「易学通変」 には、
こんなふうに書いてあります。
別に病毒が身を攻めるといふのではないが、気力の次第次第に減じて遂に消散し終る老衰の症である。如何とも手の下しようがない、───と。
十二消息卦は、
陰陽消長の理であり、
死(陰・坤)と生(陽・乾)との循環ですから、
このように見たのでしょう。
もはや、
人がどうこうすることは、
できないのです。